ワイヤーワークスのイメージ

樽の署名で読むカデューロ STR樽を看板にするワイヤーワークス

このウイスキーは、樽で名乗ってきます。カデューロの入口はSTR樽です。

ウイスキーの説明は、年数や産地から始めるものだと思われがちです。もちろん、それで困りません。ただ、ワイヤーワークスのカデューロは順番が違います。最初に押さえるべき看板が、STR樽です。樽が先に立つと、味の理由が言葉にしやすくなります。

カデューロは、軽いピートの原酒を土台にしながら、果実の深みを押し上げる方向へ寄せています。その中心に置かれているのが、ワイン樽を再生して使うSTR樽です。ここがはっきりしているから、このボトルは樽の話が一般論に落ちにくいです。

ここで鍵になるのは、樽の署名です。誰の手触りかが香りに残るという意味です。

樽の署名という言い方をしてみます。樽の署名とは、樽の種類の説明ではなく、その樽がどんな仕事をするかが、香りの輪郭として残る状態のことです。単に甘くなるとか、色が濃くなるとか、そういう話ではありません。口に入れたときの果実感の出方や、煙の引き際に、樽の手順が透ける感覚です。

カデューロは、まさにこの署名を狙っています。STR樽を混ぜるのは飾りではなく、香りの順番を作るためです。果実が先に立ち、煙は背景に回り、余韻でふっと戻る。この並びを支えるのが、STRの手入れです。

STRとは、削って焼いてもう一度焦がしたワイン樽です。

STRは英語の頭文字で、Shaved, Toasted, Re charredを短くした言い方です。意味はそのままで、樽の内側を削り、弱めの火で焼き、最後にもう一度しっかり焦がす手順です。もともとワインが入っていた樽を、ウイスキー向きに作り直す発想だと思うと分かりやすいです。

ここで重要なのは、古いワイン樽をそのまま使うのではなく、樽の内側を作り替えるところです。樽の中身は木です。木は、削り方と火の入れ方で、出てくる香りが変わります。STRは、その変化を狙いにいく工程です。

削ることで、残り香を消し、フレッシュな木の層を出します。

最初の削る工程は、ワインの名残を整然と消すためだけではありません。木の新しい層を露出させることで、ウイスキーと木が触れ合う場所を作ります。ここで狙えるのが、青い果実や白い花のように感じる香りの伸びです。軽いピートの原酒は繊細です。だからこそ、古い香りの残り方が少ない樽が合いやすいです。

弱めに焼くことで、甘い香りの元を引き出します。

次の焼く工程は、木を乾かすためではありません。木の成分が熱で変化して、バニラやキャラメルの方向へ寄る香りが出やすくなります。トーストという言い方は、パンを焼くのと同じで、焦がし切る前の温度帯を想像すると近いです。この段階の甘さは、ピートの煙とぶつからずに、果実感の後ろに敷けます。

もう一度焦がすことで、香りの輪郭と余韻の締まりを作ります。

最後にもう一度焦がす工程は、強い煙を足すためではありません。樽の内側に香りの層を作り、出方をコントロールしやすくします。焦がした層は、渋みやスパイス感の出方にも関わります。結果として、甘さがぼやけず、果実味が輪郭を保ったまま伸びやすくなります。

カデューロがSTR樽を看板にする理由は、果実の深みを足すためです。

カデューロは、STR樽とフレンチオークの比率の取り方で、軽いピートの原酒に果実の深みと強さを加える、と説明されています。ここが重要です。煙を太くするのではなく、果実を太くする。その結果、ピートは背景として残りやすくなります。

果実味は、ただ甘いだけでは成立しません。酸の気配が必要です。洋梨や焼きリンゴ、柑橘の皮のような印象は、甘さと軽い苦みが同居すると立ち上がります。STRの削ると焼くと焦がすが、まさにこの同居を作りやすい手順です。

家で飲むなら、樽の署名はグラスの中でゆっくり読み取れます。

このボトルは、注いで即座に結論を出すタイプではありません。数分置くだけで、果実の気配がまとまり、煙が静かに馴染みます。香りを探しにいくより、変化の順番を待つほうが向いています。

水を少し足す飲み方も相性が良いです。アルコールの刺激が落ち着くと、果実味の明るさが前に出やすくなり、後ろに残るスモークが細くなります。冷やし切ると甘さが閉じやすいので、室内の温度帯で追うとSTRの仕事が見えやすいです。

肴は大げさに構えなくて大丈夫です。柑橘を少し搾った魚介、蜂蜜を薄く塗って焼いたナッツ、焼きリンゴのような甘酸っぱさを持つものは、果実とスパイスの輪郭を支えてくれます。煙を強調する食べ方に寄せないほうが、この銘柄の狙いが残ります。

STR樽は魔法ではありません。だからこそ面白いです。

STRと聞くと、それだけで華やかになると思うかもしれません。ただ、STRは香りを増やす道具というより、香りの出方を整列させる技術に近いです。原酒の性格が弱いと、樽の香りだけが前に出てしまうこともあります。カデューロが成立しているのは、軽いピートの原酒に果実味の土台があり、そこへSTRの署名を重ねられるからでしょう。

同じ名前のリリースでも、樽の比率や樽の状態で表情が変わる可能性はあります。だから、買い方は固定しなくていいです。最初の1本は、樽の署名が自分の好みの速度で読めるかどうかを確かめる。そういう買い方が、このウイスキーには似合います。

商品はこちら

おすすめの商品は下のバナーをクリック!PR

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール