ワイヤーワークスのイメージ

ビールと交差するウイスキー ネセサリーイービルが残す樽の往復

ビールの気配が、ウイスキーの後味に残ることがあります。ネセサリーイービルは、その交差点です。

ウイスキーとビールは、飲む順番の話になりやすいです。最初にビールで喉を開けて、あとからウイスキーで締める。そういう習慣は自然です。ただ、ワイヤーワークスのネセサリーイービルは、順番ではなく製造の中で交差します。ビールが樽を通って、ウイスキーの味の理由になっています。

ここで面白いのは、ビール樽フィニッシュが珍しいからではありません。樽が行ったり来たりすることで、香りが記録として積み重なる点です。飲み手が追うのは限定の熱狂ではなく、樽の旅程です。

この話の中心は、樽の往復です。樽が回ると、香りが回ります。

ネセサリーイービルで語れるのは、樽が一度きりの道具ではないという事実です。今回の仕上げ樽は、赤ワイン由来の樽を削り、火入れし、もう一度焦がして作り直すSTR樽です。さらにその樽は、最初にワイヤーワークスのウイスキーを抱え、そのあとでソーンブリッジのインペリアルスタウトを抱え、最後にまたウイスキーへ戻ってきます。

インペリアルスタウトは、黒ビールの中でも度数が高く、焙煎の香ばしさやカカオの印象が出やすい種類です。ネセサリーイービルは、そのスタウトの代表格として語られます。つまり、仕上げ樽には麦芽の香ばしさや甘い苦みの記憶が残りやすいです。その記憶が、ライトピートの原酒に移ります。

ネセサリーイービルは、ただの仕上げではありません。工程そのものが設計です。

ワイヤーワークスのネセサリーイービルは、ライトピートの原酒を、まずバーボン樽で熟成させます。そのあとに、ネセサリーイービルを入れていた樽で仕上げます。仕上げの期間は約8か月とされ、わざと樽の中に空間を残して、ゆるやかな酸化が起きる条件を作ったと説明されています。酸化は空気に触れることで香りが丸くなる現象で、やりすぎると崩れますが、うまく当たると果実の印象と木の甘さが伸びます。

さらに今回の仕上げは、まとめて移し替えるやり方ではなく、複数のバーボン樽から1樽ずつ吸い上げて、仕上げ樽へ個別に詰めたとされています。樽ごとの違いを消さずに、違いを抱えたまま仕上げへ進む手つきです。限定品を追う楽しみは、こういう工程の癖が残るから生まれます。

ビールとの交差が効くのは、味だけではありません。発酵の段階から隣り合っています。

ワイヤーワークスは、ソーンブリッジのブリュワーズ酵母を発酵に使っていると説明しています。ビール造りで使われる酵母が、ウイスキーの香りの元を作る。そこから最後はスタウト樽で仕上げる。始まりと終わりが同じ隣人につながっているので、コラボという言葉が軽くなりません。

この仕上げ樽には、ビール由来の沈殿が残ることがあり、濾過の工程にも工夫があったと書かれています。そこで語られているのが、ヘーゼルナッツのような香ばしさです。酵母が分解して香りが出る現象が関わる可能性が示されていて、ビールの要素が単なる香り付けではなく、質感として入り込んでいることが分かります。

家で飲むなら、最初から濃さに向き合わないほうが分かりやすいです。

このリリースはアルコール度数が51.3パーセントで、限定2457本の番号付きとして案内されています。度数の数字に目が行きますが、狙うべきは刺激の強さではありません。香りの順番です。注いだ直後は甘さと焙煎の印象が別々に見えやすいので、少し置いてから口に入れるほうが輪郭が揃います。

水をほんの少し足すと、交差点が見えます。果実の印象が前に出て、コーヒーやカカオの影が後ろへ伸び、ライトピートは薄い線として残りやすいです。ウイスキーにビールを足すのではなく、樽が抱えたビールの記憶を、飲み手が呼び出す感覚です。

買い方の相性は、基準を置くかどうかで変わります。

ネセサリーイービルは、それ単体でも成立します。ただ、ワイヤーワークスを買いたくなる入口としては、基準の1本と並べるほうが楽です。基準はカデューロが分かりやすいです。ライトピートと果実味の距離感が掴めます。その基準があると、ネセサリーイービルで増えるのが何かが明確になります。焙煎の香ばしさなのか。甘い苦みの影なのか。余韻の色なのか。比較の形が勝手にできあがります。

限定品を追う楽しみは、収集ではなく観察です。樽が回り、酵母が回り、仕上げの条件が変わる。ワイヤーワークスのネセサリーイービルは、家の棚でその変化を待てるタイプです。次の番号が出たとき、前の番号が静かに意味を持ち始めます。

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